不妊治療が一般化するにつれて胚培養士の需要も増え、胚培養士になりたいという方も増加してきました。
しかし、いざ胚培養士を目指したいと思っても、具体的にどうゆう職業なのか、何を勉強すればよいのか悩んでいませんか。
実際に私も胚培養士を目指す学生さんによくどのような本を読めばよいかと尋ねられます。
本記事では現役胚培養士が、胚培養士を目指す方に是非読んで欲しい書籍を紹介します。
この記事を書いている私は胚培養士歴約10年の現役胚培養士ですので、信頼性の担保になると思います。
1.胚培養士がどういう人たちなのか知れる本
まず紹介したいのは須藤みか(著)の『エンブリオロジストー受精卵を育む人たちー』という本です。
この本は2009年2月19日に報道された香川県立中央病院での受精卵取り違え事件を本筋として、不妊治療に携わる胚培養士という「生命を育む人たち」がどのような人たちなのかを取材されています。
香川県立中央病院での受精卵取り違え事件は、2008年9月中旬に体外受精を受けた20代女性に対して別の患者の受精卵が移植され、妊娠9週目に人工中絶に至ったという、不妊治療において絶対に起こってはいけないことが起こった事件です。この事件を機に、不妊治療施設でのダブルチェックや管理体制が大きく変わりました。
「胚培養士(エンブリオロジスト)」といわれるマイナーな職業に就く人たちがどのような背景があるのか、日々何に悩み、喜び、苦しみながら仕事しているのか、等身大の胚培養士の姿が描かれています。
この本は第16回小学館ノンフィクション大賞受賞作で、胚培養士という知られざる「主役」について取材が重ねられています。
胚培養士がどうゆう人なのか知りたい方々におすすめの書籍です。
2.胚培養士になるための教科書
続いては日本卵子学会編集の「生殖補助医療(ART)―胚培養の理論と実際」という本です。
この本は胚培養士を認定している卵子学会が編集している本で、胚培養士の教科書的な本です。
認定試験を受験する際も多くはこの本に書かれている事から出題されます。
胚培養はもちろん、精子形成や卵子形成など基礎の内容から、卵巣刺激や採卵、移植など普段胚培養士が実際には携わらない臨床のことまで幅広く書かれています。
胚培養士を目指す人が理解しておくべきARTの知識が網羅的に詰め込まれています。
胚培養士になりたいが、何を勉強したらいいのかわからないという方は是非読んでみてください。
3.現役胚培養士が書いた胚培養士目線の本
続いては現役胚培養士が著者となっている「胚培養士の出番です! 生殖補助医療(ART)成功のカギをにぎるスペシャリストの仕事」という本です。
著者の沖津 摂先生は胚培養士の第一人者のような存在で、長らく臨床エンブリオロジスト学会の理事長を務められてきました。その他にも多くの学会で理事をはじめ役職につかれている方です。
また監修をされているのは著者の沖津先生が現在所属している楠原ウィメンズクリニックの院長の楠原浩二先生で、医師が監修されていますので医学的にも担保されています。
本書は不妊治療や卵子・精子・受精卵に関する基本的な知識から、胚培養士目線から生殖医療の現場について詳しく書かれています。
なかなか胚培養士目線で書かれている書籍は少ないので、胚培養士になりたい方や胚培養士に興味のある方にとっては非常に貴重な書籍だと思います。
4.生殖医療のことがよくわかるポケットマニュアル
最後は吉村泰典(著)の「生殖医療ポケットマニュアル」という本です。
著者の吉村先生は慶應義塾大学医学部名誉教授で第2次安倍内閣では内閣官房参与を務められたこの分野をけん引されている先生です。
そんな吉村先生が書かれているので、信頼性の担保になります。
生殖医療に携わる医療者向けに書かれた本ですが、内容は非常にわかりやすく書かれており、医療者でなくても理解できます。
生殖医療について勉強している中でわからないことがあった時にパッと調べることができる本になっています。
実際、私の周りでも持っている人が多いので、非常に信頼できる本だと思います。
胚培養について多く書かれているわけではありませんが、生殖医療全般を学べることができる書籍です。
胚培養士になりたいが、そもそも不妊治療・生殖医療がどういう分野なのかわからないという人におすすめの本ですので、是非読んでみて下さい。
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