子宮内膜症と不妊症【10人に1人は子宮内膜症と言われています】

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子宮内膜症は10人に1人の女性に発症すると言われている非常に多い病気です。

また不妊症とも密接に関係しています。実際に子宮内膜症による不妊で悩まれている方も多いと思います。

本記事では子宮内膜症と不妊症についてわかりやすく解説します。

 

この記事を書いている私は不妊治療専門施設で約10年不妊治療に従事しているので、信頼性の担保になると思います。

1.子宮内膜症の基本知識

基本情報

1-1.子宮内膜症とは

子宮内膜症とは子宮内膜とよく似た組織が子宮腔以外にできる病気です。

 

10人に1人の女性が子宮内膜症と言われているぐらい多い病気です。

 

多くは骨盤内の卵巣や卵管や腹膜、ダグラス窩(子宮と直腸の間のすきま)といった場所に見られることが多いですが、稀に肺・胸膜・乳房・胃・膵臓・尿道・手足・外陰部・帝王切開後の傷などにできることもあります。

 

どこの組織にできたとしても月経周期に合わせて増殖し、剥がれて出血、癒着して痛むという事を繰り返します。

 

できる部位によっては最初に子宮内膜症を疑わないため発見が遅れることが多いので、その症状が月経周期に関係しているかをチェックしてみましょう。

 

1-2.子宮内膜症の原因

子宮内膜症の原因ははっきりわかっていないことが多いのですが、月経血の逆流が大きな原因の1つと考えられています。

 

通常の子宮内膜は剥がれ落ちた後、月経血として経腟的に排出されます。しかし、この月経血が逆流し卵管を通って腹腔内に流れ出ることがあります。

 

そして腹腔内に流れ込んだ月経血内に含まれている子宮内膜組織が、卵巣・腹膜・臓器と臓器の間などにくっついて子宮内膜症を発症させると考えられています。

 

この月経血の逆流は約95%の女性に起こっていると言われていますので珍しいことではありません。

えっ!ほとんどの人に月経血の逆流が起こっているのね。なんだか心配だわ。

 

しかし、95%の女性に逆流が起こっていても、その全員が子宮内膜症を発症するわけではありません。免疫力の違いや環境ホルモンの影響も関係すると言われていますが、はっきりとはわかっていません。

 

1-3.子宮内膜症の増加

子宮内膜症にかかる女性の数は徐々に増加していると言われており、現在では約10人に1人の女性が子宮内膜症と言われています。

 

以前は33歳前後で患者数が最も多かったそうですが、今では20代後半から30代前半の発症が増え、10代後半でも多く見られるようになりました。

 

その原因として、単純に医学の進歩による診断機会の増加も挙げられますが、それだけではありません。

 

他に挙げられる原因としては

・初経の低年齢化

・初産の高年齢化

・出産回数の増加

があります。

 

すなわち前述したように子宮内膜症の大きな原因の1つは月経血の逆流です。そのため、月経の回数が多ければ多いほど逆流のリスク、それに伴う子宮内膜症発症のリスクは高くなると言えるからです。

 

昭和初期までは初経をむかえると、結婚し、複数回の妊娠・出産・授乳を繰り返します。そのため一生の内に経験する月経は40-50回程度と言われています。

 

しかし現代では、初経から初産に至るまでの期間が長期化し、さらに出産回数の低下、閉経年齢の高齢化も相まって、生涯に経験する月経回数は400回にも及ぶと言われており、昔の女性の約10倍にもなります

 

つまりは子宮内膜症を発症するリスクも10倍に増えているということになります。

 

1-4.子宮内膜症の主な症状

子宮内膜症患者の約9割が月経痛を症状として訴えています。

逆に月経痛が強く鎮痛剤を服用している人の4人に1人は子宮内膜症が見られると言われています。

 

それくらい月経痛と子宮内膜症は密接な関係があります。

 

月経痛以外にも、子宮を収縮させる働きのある物質であるプロスタグランジンは、子宮だけでなく胃や腸も収縮させます。子宮内膜症の人はその分泌量が多いため、胃や腸も強く収縮し、吐き気や嘔吐、下痢になる人もいるようです。

 

またダグラス窩に子宮内膜症があると、子宮と直腸が癒着し、直腸の正常な動きを妨げ便秘になったり、癒着による排便痛や性交痛を起こすのも特徴です。

さらに癒着や炎症によって月経時以外でも下腹部痛や腰痛があるケースもあります。

 

もう一つ大きな症状と言えるのが不妊です。

 

不妊女性の約25-50%に子宮内膜症があると言われており、また子宮内膜症患者の不妊症合併率も30-50%と言われています。

 

この不妊症と子宮内膜症は密接な関係がありますが、必ずしも子宮内膜症だからといって不妊症というわけではありません。子宮内膜症患者でも自然に妊娠して出産にいたる方もたくさんいます。

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2.子宮内膜症の治療法

治療法

子宮内膜症の治療には3つの目的があります。

1つは痛みを軽減すること、2つ目は妊娠しやすくすること、3つ目はがん化を防ぐことです。

それぞれのライフプランに合わせた治療法を医師と相談し選択する必要があります。

 

2-1.薬物療法

・鎮痛剤や鎮痙剤を使用する

痛みに対する対処用法です。根本的な治療ではありませんが、軽度の子宮内膜症に向いています。

 

鎮痛剤は痛みが出てからではなく痛みが出る前に飲むのが効果的です。痛みが出てからでは薬がうまく効かなかったり、結果的に強い薬を飲まなければいけなくなります。

 

そのため、自分がどのタイミングでどのような痛みが出るかなどを理解しておくことが大切です。

 

市販の鎮痛剤でもいいの?

市販の鎮痛剤でも月経痛によく効くものもありますし、単なる月経痛なら市販薬でも問題ありません。

しかし、子宮内膜症とわかっているなら、病院で処方してもらった方がよいと思います。

 

なぜなら、病院では効果を見ながら、その人に合わせて薬を変えたり、何種類かの薬を併用するからです。

 

併用させる薬としては、漢方として「芍薬甘草湯」「桂枝茯苓丸」「桃核承気湯」「当帰芍薬散」などです。

また痛みの感受性を抑えるために抗うつ剤などの精神安定剤や胃の粘膜を保護する薬が併用させることがあります。

 

鎮痛剤のメリット

・痛みがコントロールできる

・治療中も妊娠できる

・副作用がほとんどない

・体への負担が少ない

・経済的負担が少ない

 

鎮痛剤のデメリット

・病気そのものを治すことはできない

・病気が進行する場合がある

 

・ホルモン療法

ホルモン療法で最も使われるのがEP配合錠です。

EP配合錠には女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが含まれており、排卵を止める働きがあります。

 

エストロゲンとプロゲステロンが含まれるって避妊薬のピルと何が違うの?

それが同じなのです。避妊目的の場合は低用量ピル、月経困難症や子宮内膜症の治療に使用する場合はEP配合錠と呼ぶようです。

日本人のピルに対する抵抗感が感じられますね。

 

EP配合錠は子宮内膜の増殖を抑え、子宮内膜を薄くします。また月経量が減り、月経機関も短くなります。

その結果、月経痛も緩和され、子宮内膜症の症状を抑える効果もあります。

 

EP配合錠を使っても症状が改善しない場合は、次のステップとしてジドロゲステロンという黄体ホルモン製剤が使用される場合があります。

 

他にもミレーナという子宮内避妊具を装着することで、黄体ホルモンの一種が持続的に放出され、それが子宮内膜を萎縮させ、子宮内膜症の悪化を防ぐ治療法があります。

 

 

またGnRH-アゴニストを使用して閉経したときと同じ状態を作る治療法もあります。排卵や月経が完全に止まるため、月経痛などの症状がとてもよく改善されます。病巣の増殖がなくなり、病巣が小さくなる効果もあります。

 

しかし急激に女性ホルモンの分泌が低下するため、ほてり・のぼせ・発汗・イライラ・骨量低下など更年期障害のような様々な副作用があります。

 

そのため継続使用が6ヶ月と限られており、EP配合錠や黄体ホルモン製剤で改善できない場合などや、重症のケースに使用されます。

 

ホルモン療法のメリット

・痛みを緩和できる

・病気の進行を抑える

・病巣を小さくできる

 

ホルモン療法のデメリット

・治療中は妊娠できない

・副作用がある

・鎮痛剤に比べ価格が高い

 

2-2.手術療法

手術療法は主にチョコレート嚢胞(卵巣にできる子宮内膜症)の場合に検討される方法です。

 

病巣をみて、直接治療できるので効果的な方法です。薬物療法でうまく症状をコントロールできない場合に選択されます。

 

特に10㎝以上あれば選択されることが多く、また5~9㎝の場合は状態によって判断されます。

 

また大きさだけでなく、年齢とともにチョコレート嚢胞はがん化するリスクが高くなるので40歳以上の場合は早めに手術した方がよいと言われています。

 

手術にはお腹に小さな穴を数箇所あけてモニターを見ながら手術を行う腹腔鏡手術と、お腹を10㎝程切って直接見ながら手術を行う開腹手術があります

 

最近では体の負担が小さい腹腔鏡手術で行われることが多いですが、病院によって基準が違うので、事前に確認しておきましょう。

 

しかし、癒着が激しいことが予想される場合や、チョコレート嚢胞が大きい場合、悪性部があると疑われる場合などには開腹手術が選択されます。また、腹腔鏡手術で行っても癒着が思ったよりも激しかった場合は途中で回復手術に切り替わることもあります。

 

 

さらに保存手術と根治手術に別けられます。

 

保存手術は病巣を切除したり、焼いたり、癒着を剥がすことでつらい痛みをなくす手術です。対して根治手術は卵巣や子宮ごと病巣を取り除き病気の完治を目指します。

 

2つの違いは手術後妊娠できるかどうかです。根治手術の場合は子宮と時には卵巣も切除しますので妊娠はできません。しかし、保存手術は卵巣の部分的な手術や癒着を剥がすだけですので、術後に妊娠することができます。

 

じゃあ保存手術でいいじゃん!

しかし、保存手術のデメリットとして再発のリスクがあります。

そのため、年齢や将来妊娠を希望するのか否かを考慮したうえで、手術法を医師と決めなければいけません

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3.子宮内膜症と不妊

不妊

前置きが長くなりましたが、ここからは子宮内膜症と不妊の関係について記載していきます。

 

3-1.不妊に関連する子宮内膜症部位

・ダグラス窩

ダグラス窩(子宮と直腸のすきま)に子宮内膜症があったとしても排卵や受精、着床には影響はほとんどないと考えられています。

 

問題なのは強い性交痛です。癒着によって性交時につらい痛みがある場合が多く、性交を避けるようになったり、うまくいかなかったりします。

 

妊娠しなければ、月経のたびに炎症を繰り返し、痛みもひどくなるという悪循環が起こります。

 

・腹膜

腹膜にできる子宮内膜症が直接的に妊娠に影響することは少ないと考えられていますが、慢性的な炎症が腹腔内の環境を悪化させて、腹水の異常を招き、さまざまな障害を起こすとされています。

 

例えば、炎症が強くなると腹水のなかに白血球が増加します。なかでもマクロファージという細胞が多く、マクロファージは活性化すると精子を食べてしまうのです。

 

他にも腹水内にサイトカインという化学物質が多い傾向もあります。サイトカインはプロスタグランジンの放出を促し、卵管が異常収縮を起こすと考えられています。

 

そうなると排卵した卵子をつかまえる卵管采(らんかんさい)が卵子をうまくピックアップしにくくなると考えられます。

 

さらにプロスタグランジン自体も受精や受精卵の発育に障害を与えるとされています。

 

・卵管

卵管が周囲の器官と癒着することで、排卵した卵子をつかまえる卵管采(らんかんさい)が卵子をうまくピックアップしにくくなったり、卵子や受精卵の輸送が不十分になるなど、直接的に影響して妊娠しにくくなると考えられています。

 

また卵管内に病巣がある場合、卵管の狭窄(細くなっている)や閉鎖(つまっている)になる場合があります

そうなると卵子や受精卵が子宮にたどり着けなかったり、精子が卵子にたどり着けないなど根本的な障害が生じる可能性があります。

 

・卵巣

卵巣にできた子宮内膜症はチョコレート嚢胞といいます。このチョコレート嚢胞によって卵巣がはれ、卵胞の発育が悪くなったりします

また、黄体化未破裂卵胞という、卵胞が成熟しても破裂せず、中から卵子が飛び出せない状態になる場合もあります。

 

また、周辺臓器との癒着によって他の臓器の動きを邪魔する場合もあります。

 

3-2.子宮内膜症治療と不妊治療

この2つの治療を同時に続けることは基本的には難しいと考えられます。

 

子宮内膜症のホルモン療法を行っている間は排卵が止まることになるので妊娠はできません。

また不妊治療のために排卵誘発剤を使用すれば、女性ホルモンの値があがって子宮内膜症は悪化する可能性があるといったように、治療の方向性が正反対を向いているからです。

 

そのためどちらの治療を優先するかをはっきりさせることが大切と考えられます。

 

軽度の場合は、まず不妊治療を優先させ、鎮痛剤で子宮内膜症の痛みを抑えながら不妊治療を行うことがよいでしょう。

 

通常はタイミング法や人工授精など一般不妊治療から始めることが多いです。しかし、何度か試し結果が得られない場合は、ART(体外受精や顕微授精)にステップアップするか、腹腔鏡手術をすることで子宮内膜症の状態をよくしたのちに更に再チャレンジします。

 

妊娠すれば、排卵は止まりますので、多少悪化したとしても妊娠後は改善に向かうと考えられます。

 

また、年齢が高い場合や明らかに癒着が激しい場合は、卵巣機能や卵子の老化を考え、早期の妊娠を目指し、一般不妊治療や腹腔鏡手術をバイパスして最初からART(体外受精や顕微授精)を行うことをおすすめします。

 

しかし病巣がチョコレート嚢胞が10㎝を超える場合や、入院を伴うほどの症状がある場合など、子宮内膜症の治療を優先すべき時もありますので、医師と将来の妊娠についても含めてしっかり話し合いどちらを優先するか決めましょう。

 

3-3.子宮内膜症と不妊症の注意点

子宮内膜症と不妊症を併発した場合の注意点がいくつかありますので、しっかり理解してから治療を進めましょう

・子宮内膜症が必ずしも不妊原因とは限らない

子宮内膜症だからといって全員が不妊症とは限りません。普通に排卵し、普通に妊娠する人もたくさんいます。

 

不妊症の場合、子宮内膜症以外にも要因がある場合がありますので、まず不妊症の検査を受けたうえで適切な治療法を選択しましょう。

 

もちろんその検査にはパートナーの精液の検査も含まれます。

 

精液検査を受けず、独自に検査薬などを用いタイミングを取っていた場合、パートナーの造精機能に問題があると大切な時間を無駄にすることになります。

 

そうなると、もちろん妊娠の可能性も低いですし、子宮内膜症を悪化させるだけになってしまします。

 

・チョコレート嚢胞の腹腔鏡手術を受ける前に卵子の在庫を確認

卵巣の表面には原始卵胞という赤ちゃんの卵胞がたくさんあります。チョコレート嚢胞を切除するために腹腔鏡手術を受ける場合、この原始卵胞ごとごっそり切除することになります。

 

卵巣予備能(卵子の在庫数の指標)に余裕がある場合は、手術後に妊娠することは可能ですが、卵巣予備能が元から低い人がチョコレート嚢胞を切除するために腹腔鏡手術を受けた場合、卵巣予備能が更に低くなり、妊娠可能な卵子が得られない可能性もでてきます

 

将来妊娠を望み尚且つチョコレート嚢胞の腹腔鏡手術が必要な場合は、事前に自分自身の卵巣予備能を知り、どれくらいの卵巣を切除するのか適切な説明を受けることが必要と思われます。

 

最近では卵巣予備能の指標としてAMHというホルモンが有用であることが知られています。採血によって簡単に受けられる検査ですので、事前に検査を受けておくことをおすすめします。

 

もしAMH低値の場合は、医師と相談の上、妊孕性温存の受精卵凍結や未婚の場合は卵子凍結をおこなっておくことで、腹腔鏡手術による治療後に不妊治療を行うことが可能となります。

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4.参考書籍

参考書籍

子宮内膜症についての広い知識が手に入ります。

子宮内膜症の仕組みや症状はもちろん、治療方法についてわかりやすく書かれています。

また不妊治療との関係についても開設されています。

その他にも、子宮内膜症と上手に付き合うための、生活の工夫についても書かれています。

子宮内膜症に悩んでいる人はもちろん、不妊症との関係を知りたい方にもおすすめの1冊です。

5.まとめ

・10人に1人の女性が子宮内膜症

・月経周期に合わせて増殖し、剥がれて出血、癒着して痛む

・月経血の逆流が大きな原因の1つ

・初経から初産に至るまでの期間が長期化、出産回数の低下により子宮内膜症のリスクが増加している

・治療法には薬物療法と手術療法がある

・子宮内膜症の治療と不妊治療の治療を同時に続けることは基本的には難しい

・子宮内膜症が必ずしも不妊原因とは限らない

・チョコレート嚢胞の腹腔鏡手術を受ける前に卵子の在庫を確認しましょう

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