不妊治療で行われる治療【人工授精・体外受精・顕微授精を簡単解説】

不妊治療の治療法を解説のアイキャッチ不妊治療
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不妊治療には多くのステップがあることをご存じですか?

タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精・胚移植などいろんな言葉を聞きますが、違いがよくわからないと感じていませんか。

なんだか同じよう言葉ばっかりで分からなくなっちゃう!

本記事では不妊治療で行われる代表的な治療法についてわかりやすく解説します。

 

本記事を書いている私は不妊治療専門施設で約10年技術者として従事している不妊治療の専門家なので信頼性の担保になると思います。

 

1.不妊治療で行われる治療とは

コウノトリが赤ちゃんを運ぶ

不妊治療は大きく分けて一般不妊治療と高度生殖補助医療の2つに分けられます

 

一般不妊治療というのはタイミング法・人工授精をはじめ比較的簡単に行える不妊治療です。

場合によっては漢方療法や針治療なんかも含まれます。

 

それに対し高度生殖補助医療とは名前の通りレベルの高い技術を必要とする生殖補助医療(≒不妊治療)です。

 

代表的なものとして体外受精-胚移植や顕微授精-胚移植が挙げられます。

 

以下ではそれぞれの治療法の技術や違いを解説します。

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2.一般不妊治療

診察をしている医師

2-1.タイミング療法

排卵直前の期間に性交行ってもらう、もっとも基本となる不妊治療です。

 

排卵がいつ起こるのかを予測することがもっとも重要と考えられます。

 

排卵日の予測には経腟超音波検査による子宮や卵巣の変化を観察するのが有効とされています。

 

また内分泌的にはLHサージ(一過的なLHの上昇することで排卵が促される)が引き金となり32~40時間で排卵することが知られています。

 

それらのホルモンの値を測定することでも排卵の予測をすることが可能です。

 

現在では市販の尿検査キットでこのLHサージを検出することもできるので、まだ病院にかかっていない妊活中の方でも行うことができます。

 

適応としては原因不明不妊(各種の不妊検査を行っても原因を特定できないカップル)や軽度の乏精子症などです。

 

 

また、加えて排卵障害や視床下部性の無月経の症例に対し、排卵誘発と併用する場合があります。

 

すなわち経口薬や注射薬によって適切な卵胞の発育や排卵の刺激に必要なホルモンを補充し、よいタイミングで性交をもってもらう方法です。

 

注意しなければいけないのはホルモン剤を使用した場合の多胎妊娠です。

 

よく、不妊治療患者の中にも「1回で2人産まれたらラッキー」なんていう人もいますが、多胎妊娠は母体にも胎児にもリスクが多いのでなるべく避けるべきなのです。

 

そのため卵胞のモニタリングは必須です。

また、複数個の卵胞が育ってしまった場合はキャンセルになることも理解しておかなくてはいけません。

 

2-2.人工授精

排卵期に合わせて、体外で調整した精子を子宮内に注入する方法です。

 

排卵日の予測はタイミング法と同様です。

 

適応は軽度の乏精子症や射出障害、性交障害などの男性不妊や原因不明不妊になります。

 

通常の性交では精子全体の約1%のみしか子宮に到達しないと考えられています。

そのため、子宮内に直接精子を注入することで精子にとって大きな壁となる膣から子宮頚部にまでの通過をバイパスさせることができます。

 

人工授精の実際の妊娠率は10%前後と言われています。

 

また妊娠した人のほとんどが5~6回以内に妊娠すると報告されており、長く続ける意味は薄く、特に高齢の場合は早期に高度生殖補助医療への移行を考慮すべきと思われます。

 

施設によってはAIHやIUIと略される場合がありますが、どちらの場合でも同意であり人工授精です。

AIHは配偶者間の人工授精のみを指す言葉で、IUIは非配偶者間(精子提供)の人工授精を含む人工授精の総称というイメージですので気にする必要はありません。実際の技術は全く同じです。

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3.高度生殖補助医療

マッチを体外受精に見立てている

英語ではAssisted Reproductive Technologyの頭文字をとってART(アート)と呼ばれます。

不妊治療の病院を調べているとART(アート)やHART(ハート)という言葉が病院名に含まれている施設を目にしませんか。

 

そうです。そのARTは生殖補助医療(技術)のことで、HARTはHuman(ヒトの) ARTの略です。

 

また一般不妊治療から高度生殖補助医療に移ることや、体外受精から顕微授精に移行することをステップアップと呼びます。基本的にステップダウンすることはないので、ステップアップする際はそのことを頭に入れておきましょう。

 

それでは高度生殖補助医療技術について解説していきましょう。

 

3-1.体外受精

体外で卵子と精子が巡り合う場を提供する方法です。

具体的には採卵によって得られた卵子と体外で調整した精子を培養ディッシュ(プラスチック製の培養用のお皿)の中に一緒に入れ、培養器で数時間~一晩静置する方法です。

 

患者さんたちの間では「ふりかけ」と言われることが多いです。

 

英語ではin vitro fertilizationの頭文字をとってIVFと略されます。

 

このIVFも病院名でよく目にしますよね。そのIVFです。

 

体外受精やIVFという言葉は、下記で解説する顕微授精を含めた体外で受精させる技術全般を指す場合もあるので注意が必要です。

 

またin vitroは「体外」と略すのが一般的ですが、直訳するとラテン語で「ガラスの中で」「試験管内で」になります。

 

そのため世界で初めて体外受精によって子供が誕生したとき、日本では「試験管ベイビー」と呼ばれ物議をかもしました。

 

確かに直訳すると試験管ベイビーかもしれませんが、個人的には少し悪意のある呼び方なように感じます。実際、当時はそのように受け取った人もたくさんいるのではないでしょうか。

 

 

適応は卵管障害や各種男性不妊、子宮内膜症、高齢女性、原因不明不妊など幅広く行われています。

 

ちなみに日本は体外受精の実施件数は世界1位です。しかし、採卵あたりの妊娠率は最低レベルです。

 

日本の技術力は低いってこと?

いいえ、そういうことではないので安心してください。

日本の技術力は恐らくトップクラスでしょう。

 

しかし、日本では自然周期・低刺激という採卵が一般的で世界の主流とは異なることが原因と言えるでしょう。

 

世界では1回でなるべく多くの卵子を取り、なるべく早く妊娠という結果を得ることを重視する傾向があります。

この分野で最も権威のある学会の1つであるESHRE(欧州生殖医学会)のガイドラインでも日本で主流になっている採卵法は否定されています。

 

自然周期・低刺激を否定するわけではないですので、自分に合った体外受精実施施設を選ぶことが重要です。

 

3-2.顕微授精

顕微鏡下での操作によって、人為的に授精を行う方法です。

顕微授精にもいくつかの種類がありますが、現在では「卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection)」を略してICSI(イクシー)といわれる方法が主流です。

もはや顕微授精≒ICSIという理解で問題ありません。

 

ICSIは1匹の精子を顕微鏡下で細いガラス管も用いつかまえ、直接卵子の中に入れるという方法で、精子が卵子にたどり着くすべての過程をバイパスした技術です。

 

患者さんたちの間では「顕微(けんび)」と言われています。

 

ICSIの発明によって必要な精子の数に制限はなくなり、極論すると1匹の精子さえいればなんとかなるかもしれないということになります。

 

これは重度の乏精子症や無精子症で精巣や精巣上体から手術によって得られた精子によっても妊娠を可能としたことから、特に男性不妊患者に福音を与えています。

 

ICSIにもいろんな技法がありますが、どれを取っても受精成績には胚培養士の力量が大きく関連します。

 

そのため、ICSIを必要とする場合は経験豊富で有名な施設を選ぶことをおすすめします。

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3-3.胚移植

体外受精や顕微授精によって得られた受精卵を子宮内に戻すことです。

採卵とは違い、慣れている施設ならほんの5分程度で終わってしまいます。

 

大きく分けて新鮮胚移植と凍結融解胚移植の2つがあります。

 

新鮮胚移植は採卵と同じ周期にそのまま受精卵をお腹に戻しますが、凍結融解胚移植は採卵とは別の周期にホルモンを補充し子宮を妊娠に適した状態にしてから移植するという方法です。

 

ひと昔前までは、新鮮胚移植が積極的に行われてきましたが、最近は凍結融解胚移植が多くなってきました。施設によっては新鮮胚移植を辞めて、凍結融解胚移植しか行っていないというところもあります。

 

これらはどちらがいいというわけではなく、採卵のために積極的に卵巣に刺激を与えている場合、採卵に適した体になっているため、移植に向いていないという事なのです。

逆に言えば卵巣に刺激をあまり与えていない場合は新鮮胚移植でもよいという事になります。

 

各々に合った移植法が選択できるかという医師の技量が必要なのだと思います。

 

ホルモン補充にも筋肉注射・膣座薬・経口薬と様々あり、施設によって「この方法がいい、あの方法はダメだ」と言い合っていますが、長年決着が着かずにそれぞれの方法でやり続けていますので結局どれも変わらないという事だと思います。

 

4.「受精」と「授精」の違い(おまけ)

顕微鏡で何かをのぞいている

人工授精や顕微授精は「授精」と書くのに、体外受精には「受精」を使うのはなぜなのかと疑問に思いませんでしたか?

 

ちなみに英語でも違う単語を使います。授精には「insemination」、受精には「fertilization」を使います。

 

日本語では同じ発音ですが、全く異なった概念があるのです。

 

「受精」は精子が自身の運動によって卵子内に侵入するという生命現象の名称であり、体外受精の場合は体外でこの現象を再現しているだけですので、「受精」を使用します。

語源はラテン語の「ferre」 (生む・出産する)に由来します。

 

対して「授精」の語源はラテン語の「inseminare」(移植する)に由来し、人間の行為を表す用語です。人工授精は精子を人為的に子宮に移植する行為であり、顕微授精は精子を人為的に卵子内に移植する行為です。その「授精」の結果、受精現象が起こるかどうかは別問題なので「受精」ではなく「授精」を使用します。

 

日本語の発音は同じなので不妊治療を行う際に困ることないですが、もし記載することがあれば使用には気を付けましょう。

 

新聞記事ですら間違えて使用していることがあります。もし間違えて使用している記事があれば生殖分野に精通した人が書いているわけではないことがわかりますね。

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5.まとめ

・精液の所見など各種検査結果によって、一般不妊治療から始めるのか高度生殖補助医療から始めるのか変わる。

・一般不妊治療に時間をかけ過ぎるのは禁物。

・高度生殖補助医療には胚培養士の技量が大きく関わる。

・胚移植の方法やホルモン補充方法も施設によって異なる。

・「授精」と「受精」は異なった概念があるので注意。

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