不妊治療が上手くいかず転院するかで悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
でも大丈夫です。不妊治療で転院はよくあることです。
しかし、タイミングを間違えたり、ポイントを逃すと「前の病院の方がよかった」なんてことにもなるかもしれません。
本記事では不妊治療で転院を考えるタイミングとポイントを徹底解説します。
この記事を書いている私は不妊治療施設で約10年働いており、転院した患者さんや転院してきた患者さんをたくさん見てきましたので、信頼性の担保になると思います。
1.不妊治療で転院を考える3つのタイミング
不妊治療を行っていて転院を考えるタイミングは3つあります。
それぞれ解説していきましょう。
・医師やスタッフを信頼できなくなった、不信感がある
不妊治療は医師やスタッフと話すことが非常に多い治療と思います。
そのため人間関係が築けていないと、お互いにストレスを感じることになるでしょう。
「説明がわかりにくい」「質問を聞いてくれない」「目を見て話してくれない」「怒られた」「成績が悪いのを全て卵子のせいにする」「前と言っていることが変わっている」など、信頼がなくなるタイミングはたくさんあると思います。
「ここなら安心して任せられる」「ここなら妊娠できる気がする」「ここでダメならしょうがない」という信頼できるところで治療することが妊娠を早めるかもしれません。
もし信頼がなくなり通院がストレスになるなら転院を考えるべきでしょう。
・なかなか結果が得られない
これも「信頼できなくなった」につながりますが、「受精率が悪い」「胚盤胞へ発生しない」「妊娠しない」など治療が上手くいかず、なかなか結果が得られない場合は転院を考えた方がよいでしょう。
不妊治療施設の心臓部と言える培養室のレベルは施設によって様々です。
また単に胚移植といってもその方法も施設によって変わってきます。
自分にあった治療法ではないのかもしれません。
また結果が出ていない治療を何の説明もなく継続されるときも転院を考えるタイミングと思われます。
うまくいかなかった場合、納得がいく説明が得られないなら信頼感が失われます。
なぜうまくいかなかったのかわからないなら「わからない」と正直に言われた方が、何の説明がないよりかはマシですよね。
・転居や転職によって通院が難しくなった
病院選びのポイントの1つはアクセスの良さです。
転居や転職で通院が難しくなり、そこにストレスがかかるなら転院を考えましょう。
しかし、現在通院している施設が「信頼できる」のであれば、無理に転院する必要はありません。
「通院のストレス」と「信頼感」を天秤にかけ、よく検討しましょう。
2.それ本当に転院して大丈夫?
・転院によって治療が長引いている
特に都市部で不妊治療を行っている方の場合よくあるのですが、不妊治療施設が多いためか、転院が当たり前になっており、転院した瞬間に次の転院先を探している患者さんを目にします。
不妊治療を受けている人で転院する人は非常に多く、2・3施設目なんて人はざらに存在します
しかし、時たま5施設目や6施設目という人を目にします。
これは転院しすぎです。
本当に必要な転院なら仕方ないのですが、1周期うまくいかなかったから転院するという考え方ならやめておいた方がよいでしょう。
不妊治療は難しい治療です。病気ではないので、痛いのがなくなったなど目に見える効果が実感しにくい治療ともいえるでしょう。
その分、1人1人にあった治療法を模索しながら進行します。
1周期うまくいかなかったら、「次は刺激を変えてみよう」「排卵誘発のタイミングを変えてみよう」などその患者さんにあった治療法を探します。
もちろん経験的に1発でそれを当てられれば良いのですが、必ずしもそういう訳にはいかないのが現実です。
そのため、短期間で転院されてしまったら、次を考えることができないのです。
また転院先でも同じ治療法が行われるかもしれませんし、転院先でも検査や初診の聞き取りから始まり、振り出しに戻ります。
そうするとおのずと治療期間が延びる可能性があります。
もし信頼できる施設ならば、最低でも半年や1年という期間治療を続け、それでもダメなら転院を考えてはいかがでしょか。
転院して直ぐに次の転院先を探すのではなく、まずその施設を信頼してみることが大切かもしれません。
・人間関係を築く努力はしたのか
不妊治療に必死になりすぎて、医師の説明を遮って質問をしたり、感情的になったりしていませんか。
必死になるのはよくわかるのですが、医師やスタッフも人間ということは忘れてはいけません。
自分がやられて嫌なことはやられたくないのです。
話を遮って質問されたり、大声で怒鳴られたり、長時間質問攻めにされたり、時間通りに来なかったりすると医師やスタッフも嫌な気持ちになります。
なるべく表に出さないようにしていますし、そのような扱いを受けることは慣れていますが、出てしまうこともあるかもしれません。
もし、何の落ち度もなく雑な扱いを受けたなら仕方ないですが、最初は人間関係を構築する努力をすることも必要かもしれません。
努力をした結果、人間関係が構築できないなら転院が必要ですね。
3.転院先を選ぶ時のポイント
基本的には最初の病院選びと同じです。
こちらの記事で解説しているので、是非参考にしてみてください。
まず選ぶ方法としては以下の3つです。
・病院ホームページで選ぶ
・説明会で選ぶ
・口コミで選ぶ
また見るべきポイントは以下の3つです。
・アクセスの良さ
・自分の望む治療を行っているか
・診療日や診療時間
これに併せて転院の場合、以下のポイントに気をつけましょう。
・凍結している受精卵や精子を受け入れてくれるのか
前医で凍結している受精卵や精子がある場合、これらを受け入れてくれるのかとその料金についても事前に確認しておきましょう。
凍結方法は施設によって異なります。
特殊な方法やマイナーな方法で凍結されている場合、転院先では融解できないために受け入れてもらえない場合があります。
また移送方法は基本的に液体窒素を用いた方法になりますので、通常の配送業者を使用できない場合が多く、専門の業者と契約していない施設の場合、患者さん自身が大きな容器を直接運ばなくてはいけない場合や、移送費が高額な場合があるので事前の確認が必要です。
4.転院するときやっておいた方がよい3つのポイント
・紹介状をもらっておく
紹介状をもらっておくと、これまでの治療の履歴や、血液検査・精液検査の結果、感染症の有無などをコピーして貰えることもあります。
紹介状をもらっておくことで、転院先での検査を省略できたり、うまくいかなかった治療法を避けることもできたりするので有効と思われます。
紹介状ってないと転院できないの?
そんなことないですよ。多くの施設では紹介状は不要な場合が多いです。しかし、紹介状がないと同じ検査をまた行わなくてならず、お金と時間を消費します。
あと、数は少ないと思いますが、大学病院などの施設の場合に紹介状が必須の場合があるそうです。事前に確認しておきましょう。
紹介状があるとなおよいってことね。でも転院するって言いだしにくいなー
心配しなくても大丈夫です。不妊治療施設は転院に慣れていますので、「心機一転して転院しようと思います」と直接的に言っても大丈夫ですし、「引越しします」「転職するので・・・」といって嘘をついても追及されることはほとんどないでしょう。
・これまでの治療履歴をメモしておく
紹介状をもらっていても、これまでの治療について深く記載されていな場合があります。
また紹介状をもらっていない場合でも、これまでの治療についてのメモがあると重宝されます。
具体的には「いつ」、「どのような治療を受けて」、「どのような結果だったか」です。
「いつ」というのは30代前半の結果なのか、40代になってからの結果なのかで意味合いが変わってくるからです。
「どのような治療を受けて」に関しては、卵巣の刺激方法、採卵数、受精方法(体外受精or顕微授精)、受精率、胚盤胞発生率、移植時のホルモン補充の有無などです。
これは詳しければ詳しいほど有益です。
「どのような結果だったか」に関しては、妊娠・出産の有無、流産の有無、染色体検査を受けているならその結果などになります。
え!今までの治療覚えてないんだけど大丈夫?
大丈夫です。覚えている範囲で構わないのでメモしておくとよいですよ。
・凍結している受精卵や精子の扱い
転院先で凍結している受精卵や精子を受け入れてくれるか確認しておくことも重要ですが、前医にも送り出してくれるか確認しておく必要があります。
施設によっては基本ダメだが、患者さんが直接持って運ぶならOKというところもあります。
転院先と前医の両方に事前に確認しておいた方が確実でしょう。
また保存料金や保存期間についてももう一度確認しておいた方がよいでしょう。
5.まとめ
・信頼ができなくなったときや結果が得られない時が転院の考え時
・転院し過ぎると治療が遅延する可能性がある
・一定期間は一つの施設で治療した方がよい場合もある
・人間関係を築く努力もしてみよう
・凍結している受精卵や精子がある場合は事前に移送可能か確認する
・紹介状をもらっておく
・紹介状はなくてもよいが、これまでの治療をメモしておく
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