不妊治療にはお金がかかることはもう周知の事実ですよね。そのため現在日本では特定不妊治療費助成制度があり、治療費の一部を助成しています。
不妊治療に関しては保険適応も検討されていますが、その制度が適応されるまで助成金の拡充という形で治療費の負担を減らすことが考えられています。この記事では2021年1月からこの助成金制度の拡充が決定しましたので以前までの助成金と比較して解説します。
現在の制度については過去の記事で解説していますので参考にしてください。
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この記事を書いている私は10年以上不妊治療に従事している専門家ですので、信頼性の担保になると思います。
1.特定不妊治療費助成制度と問題点
厚生労働省が行う不妊治療の経済的負担軽減を目的とした支援事業です。
しかし運営自体は各都道府県や指定都市が行っていますので、申請方法や必要書類が異なりますので、各自治体のサイトでチェックしましょう。
そもそもなぜ助成金が必要なのでしょうか。
それは不妊治療には健康保険が適応されず、非常に高額な治療費がかかるからです。
不妊治療患者を支援しているNPO法人Fineの調べでは半数以上の患者が100万円以上の治療費を支払っているそうです。
さらにお金が必要なのにも関わらず、治療と仕事の両立を断念せざる負えない、すなわち女性が仕事を辞めざる負えないというカップルも多いという悪循環になっています。(NPO法人Fineのアンケートより)
そのため、助成制度必要となったわけですが、しかし実際にこの助成制度の恩恵を受けられているのは約半数と言われており、また恩恵を受けていても満足している人はごく一部ではないでしょうか。
問題点としては・・・
☆受けている不妊治療が助成の対象ではない
☆年齢制限がある
☆手続きが面倒
☆事実婚では受けられない
☆助成回数に制限がある
☆助成額では補えない
といったことがあげられますが、何より多いのが・・・
『所得制限を超えてしまう』というものです。
現在の所得制限は「夫婦合算の所得金額が730万円未満」となっています。
東京都では905万円に緩和されていますが、それでも共働きなら直ぐに超えてしまうのが実情ではないでしょうか。
それでは2021年1月から開始する拡充ではこれらの問題点がどれだけ解決されるのでしょうか。
2.助成金の拡充内容
まず初めに助成額ですが、「1回の治療につき15万円、初回に限り30万円を上限」として助成されていたのが「2回目以降も30万円」に引き上げとなりました。
次に助成回数ですが、「妻の年齢が40歳未満は通算6回まで、40歳以上43歳未満は通算3回まで」だったのが、「子ども1人につき最大6回まで(40歳以上は3回まで)」に緩和されます。
所得制限は、「夫婦合算の所得金額が730万円未満であること(東京都は905万円)」でしたが「所得制限は撤廃」となります。
婚姻関係に関しては「婚姻をしている法律上の夫婦」とされていましたが、年金など他の社会保険制度に合わせる形で「事実婚カップルも対象」となるようです。
東京都では既に事実婚の夫婦も認められており、住民票の続柄に夫(未届)、妻(未届)等の記載があり他に法律上の配偶者がいないことが条件となっていますので、同等の条件になることが考えられます。
最後に対象年齢は「治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満であること」を「そのまま維持する」ということです。
それでは問題点がどれくらい改善されるか見てみましょう!
☆所得制限を超えてしまう・・・〇:撤廃により改善される
☆受けている不妊治療が助成の対象ではない・・・×:対象は変わらない
☆年齢制限がある・・・×:年齢制限は変わらない
☆手続きが面倒・・・×:ほとんど変わらない?
☆事実婚では受けられない・・・〇:法律上の夫婦でなくてもよい
☆助成回数に制限がある・・・△:やや改善
☆助成額では補えない・・・△:やや改善
年齢制限が残ることや、助成回数や助成額がやや改善という点では不十分と思われる方も多いかもしれませんが、所得制限が撤廃されることで、助成を受けることのできる患者さんの母数が増えることは間違いなので、その点は非常によいと思います。
3.厚生労働省の新たな支援
助成制度とは別に不妊治療に関する新たな支援制度を進めているそうです。
☆不妊治療を受けやすい環境を整える中小企業への助成制度制定
☆不妊治療のための休暇などの導入を支援する企業向けのセミナー開催
☆がん患者の妊孕性温存(卵子・精子・受精卵)凍結の費用負担軽減
☆里親・特別養子縁組制度の不妊治療施設での情報提供
などが考えられているようです。
今後さらに助成金だけではない支援が増えることを期待したいですね。
もっというなら、経済的な支援だけでなく精神的なサポートもあるともっとよいですね。
4.保険適応を待つべき?
現在、不妊治療の保険適応が話題ですが、患者さんの中にも、受診控えをする人もいるようです。
確かに助成制度があるにせよ、「まだまだ経済的負担が大きい」・「保険適応されるならそれまで待ってもっと治療費を軽減したい」と思うのも当然ですよね。
不妊治療の専門家の意見としては「受診控えはやめてください!」というのが本音です。
というのは不妊治療は年齢との勝負といっても過言ではないからです。
その為、20代や30代前半の方など年齢的に余裕がある方を除いて先延ばしにすることは、その後の不妊治療を引き延ばす事に繋がる可能性があります。
そうすると結果的に支払う治療費は多くなるかもしれませんし、治療が大変になるかもしれません。
5.まとめ
・2021年1月から不妊治療助成金の拡充が開始される
・所得制限の撤廃、事実婚が認められるなど一部は改善
・受診控えはやめておいた方がよい
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