PCOSの原因と治療法【PCOSで子供を得るために知っておくべきこと】

PCOSの基礎知識のアイキャッチ 不妊治療
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不妊症の検査でPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)が原因と言われたことがある人も多いのではないでしょうか。

またPCOぎみなんて言われ方をされる方もいますよね。不妊原因の中でもPCOSによる排卵障害は多いです。

その治療にはPCOSに対する正しい理解が必要です。本記事ではPCOSの原因と治療法を徹底解説します。

 

この記事を書いている私は不妊治療施設で10年以上働く現役胚培養士ですので、多くのPCOS患者を目にしてきましたので信頼性の担保になると思います。

 

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1.PCOSとは

PCO

PCOSとは“polycystic ovarian syndrome”の略で日本語では多嚢胞性卵巣症候群といいます。

 

名前の通り、一度に卵胞がたくさん成長してしまいます。その結果、排卵障害や成熟障害を引き起こし不妊にいたります

 

不妊治療を受けている方の中でも、このPCOSに悩まれているかたは非常に多いです(生殖年齢にある女性の5~8%)。

 

以下の3つにあてはまる方がPCOSと診断されます(日本産科婦人科学会)

・多嚢胞性卵巣(PCO)

エコーで卵巣表面に10mmくらいの同じような大きさの卵胞がたくさん1列に並びネックレスサインと呼ばれる特徴的な状態が見られる。

・月経異常

具体的には月経周期35日以上の月経異常がある場合とすることが多いです。

・血中男性ホルモン(アンドロゲン)高値またはLH(黄体形成ホルモン)基礎値高値かつFSH(卵胞刺激ホルモン)基礎値正常

 

また、男性ホルモンの値が高くなることで、ニキビが多い・毛深い・声が低いなどの自覚症状がみられることもあります。

 

また血糖値が高い方や肥満傾向がある方もPCOSになりやすいと言われていますので、注意が必要です。

 

さらに最近ではPCOSの指標としてAMHの値もよく使用されます。

施設にもよりますが、AMHが5.0ng/ml以上の場合はPCOSの疑いがあります。

 

AMHについては以下で詳しく説明していますので参考にしてくださいね。

↓↓

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2.PCOSの原因

原因

LHの高値と卵巣内の男性ホルモンが多いことが原因といわれています。

 

LHとFSHのバランスが崩れLHが過剰に分泌されることが大きな原因の1つです。

 

また男性ホルモンが高くなる原因の1つとして、血糖値を下げるホルモンであるインスリンに対する抵抗性があることが考えられています。

 

インスリン抵抗性はインスリンに対する細胞の反応が鈍くなり、細胞がグルコースを取り込みにくくなるために血中のグルコース濃度が高くなることを言います。

 

少し難しくなりますがインスリン抵抗性(高インスリン血症)があると・・・

・SHBG(性ホルモン結合グロブリン)の生産抑制による活性型アンドロゲン(男性ホルモン)の増加

・IGFBP-1(インスリン様成長因子結合蛋白)の産生抑制によるアンドロゲン(男性ホルモン)分泌促進

このように男性ホルモンの増加によってLHが増加し、逆に卵胞の発育に必要なFSHが低下します。

 

その結果、卵胞発育が不十分になり、更にLHは男性ホルモンを産生する作用があるので排卵されない卵胞が増えると、排卵を促すためにまたLHが分泌され、結果として男性ホルモン値がますます上昇し・・・という悪循環に陥ります。

 

そのため、排卵障害や成熟障害が起こると考えられます。

 

また男性ホルモンは卵胞の外側の膜を厚くするとも言われており、それによっても排卵を妨げます。

 

インスリン抵抗性を引き起こす原因としては、まず肥満が考えられます。

特にBMI≧25kg/m2の方は要注意です。

 

しかしながら、日本人女性においては肥満でなくてもインスリン抵抗性をもつ方が多いと言われています。

肥満以外にもインスリン抵抗性を引き起こす要因として遺伝性のものやストレス、睡眠不足、運動不足、飲酒、喫煙など様々な要因が考えられています。

 

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3.PCOSの注意点

注意点

PCOSの治療法としては大きく分けて2つになるでしょう。

それぞれ注意点がありますので解説していきましょう。

 

1つは薬剤を使用して排卵の機会を増やすことです。

内服薬を用いることで排卵できるようになる場合があり、一般不妊治療によって妊娠する可能性はありますが、PCOS患者の排卵誘発は難しく、少量だと反応せず、少し多くしただけで過剰反応する傾向にあります。

 

その結果、リセットが続き治療が長引く可能性がありますので注意しましょう。

 

2つ目はART(高度生殖医療)にて、排卵にとらわれず体外で受精卵を得る方法です。

1つ目の方法で排卵が上手くいかない方や、早期に結果を得たい方はこちらをおすすめします。

注意点としては排卵刺激によるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の誘発です。

 

OHSSはPCOSの方が体外受精を行う上で、一番気をつけなくてはいけない合併症です。

OHSSは軽度の場合は嘔気、嘔吐、腹痛などで済みますが、ひどい場合は腹水、胸水、更に血栓症などを引き起こす場合もあり、命にかかわる合併症ですので、最大限の警戒が必要です。

 

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4.PCOSの治療法

投薬

・投薬で排卵を目指す

排卵の機会を増やすことを目的にした治療としては、まずクロミフェンなどの投薬によって簡単に排卵に至る方もいます。

反応が悪い場合はプレドニンなどのステロイドを併用する場合もあります。

また女性不妊でよく使われる漢方薬の温経湯(ウンケイトウ)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)を併用する場合もありますが、効果は限定的だと思われます。

 

これでも排卵しない場合は、排卵誘発剤を使用します。

しかし、PCOSの方は排卵刺激に過剰に反応してしまうことがありますので、注意が必要です。

 

また、インスリン抵抗性があるタイプのPCOSの方には糖尿病治療薬であるメトフォルミン(メトグルコ・グリコランなど)を使用して血糖値を下げることで、インスリンの分泌も低下させ卵巣内での男性ホルモンも少なくさせます。

メトフォルミンの副作用としては腹痛や下痢などがあります。私も経験しましたが、大体の場合すぐ慣れますので大丈夫です。

 

甲状腺機能低下症による基礎代謝低下が原因の肥満の場合のタイプのPCOSの方にはチラージンがしばしば処方されます。

 

いずれの場合も効果を得るには数ヶ月かかりますし、これらを用いても結局は排卵できない場合もあります。

 

上手くいかない場合はあまり長引かせず、ART(高度生殖医療)に移行しましょう。

 

・GnRH-アゴニストトリガー

ARTに進んだ場合の卵巣刺激としては、GnRH-アンタゴニストを用いて卵巣刺激を行い、十分に卵胞が育ったところで、GnRH-アゴニスト(ブセレキュアなど)で排卵誘発を行います。

 

PCOSの方の卵胞の成長のコントロールは難しく、マイルドな卵巣刺激を用いコントロールしようと思っても上手くいかないことが多いです。

それよりも変にコントロールしようとしないことが大切です。

 

多くの施設ではPCOSの方の卵子は質が良くないと言いますが、そんなことは一切ありません。むしろ、良い卵子がたくさん取れることの方が多いです。

 

卵子の質が悪いと言っている施設は卵胞の発育を変にコントロールしようとした結果、上手くいっていないのだと考えられます。

 

卵巣刺激を行う上で気を付けないといけないのは、前述しましたOHSSです。

 

OHSSはPCOS患者の排卵刺激にhCGを用いる場合、高い確率で起こります。

hCGとGnRH-アゴニストで内因性のLHを上げた場合、半減期がhCGの方が長いのでOHSSを引き起こしやすいのです。

 

以前、私の勤めている施設に転院してきた患者が、前医では毎回OHSSになると言われており、どういう刺激をしていたのか伺った所、明らかにPCOS所見にもかかわらずhCGが使われているという事がありました。

 

まだまだPCOSに対応できる医師は少ないのだと痛感しました。

そのため、経験豊富な施設を選ぶことと、患者様自身も正しい知識を身につけておく必要もあります。

 

・IVM(in vitro maturation)

OHSSの回避として、IVM(体外成熟培養)という方法もあります。

 

排卵誘発がOHSSの原因となるなら、排卵刺激を行う前の未成熟な段階で採卵し、体外で培養することで成熟させて、顕微授精を行うという考え方です。

 

残念ながら、IVMの成績は以前に比べ改善はしたものの、通常の方法で採卵した卵子を用いた場合と比較して、受精率・胚盤胞発生率・妊娠率は低いのが現状です。

 

また、実施施設が制限されるというのが欠点の一つでもあります。

 

IVMはGnRH-アゴニストで排卵誘発を行ってもOHSSになってしまうくらい反応がよい人には有用かもしれませんが、OHSSを回避する方法は他にもありますので、適応は限定的と思われます。

 

・腹腔鏡下卵巣多孔術

腹腔鏡下に卵巣に穴をあけたり、表面に傷をつける手術です。

この手術を行うことで薬剤に対する反応性がよくなったり、自然に排卵するようになったりすることもあります。

しかし効果は半年~1年で、またもとの状態に戻っていきます。さらに手術によって癒着を起こす可能性もあります。

 

そのため、複数人の子供が欲しい場合などや癒着のリスクを避けたい場合はARTを選択する方がよいかもしれません。

 

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5.最後に

最後に

PCOSの原因はインスリン抵抗性などの場合もありますが、原因がはっきりとはわかっていないことも多いです。

 

体質改善や投薬によって自然に排卵するようになる場合もありますが、難しい場合もたくさんあるのが現状です。

 

その場合、早期にARTを進められることもあると思います。

PCOS患者のARTは経済的・身体的に大変なことも多いですが、1回で多くの受精卵が得られることが多いです。

 

いずれの治療にせよ根気よく治療を行うことが大切です。

6.まとめ

・生殖年齢の5~8%の女性がPCOSである

・血糖値が高い方や肥満傾向がある方もPCOSになりやすい

・AMHが高い方もPCOSの可能性がある

・高LHと卵巣内の男性ホルモンがPCOSの原因

・男性ホルモンが高くなる原因としてインスリン抵抗性が考えられる

・PCOSの治療ではOHSSに細心の注意を!

・一般不妊治療だと難しい場合が多く治療が長引く場合がある

・ARTを行ったPCOS患者の卵子の質は低くない

・IVMはOHSSを避けれるが成績は悪い

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