不妊治療にかかる費用はとっても高い!というイメージがありませんか?
実際、不妊治療の中でも重要な位置を占める人工授精や高度生殖医療(体外受精や顕微授精)は保険適応外であり治療費が高額となることは珍しくありません。
このことから、経済的な理由で治療を続けられなくなったり、あきらめてしまったというような話はよくある話です。
では、少しでも不妊治療にかかる費用を抑えることはできないのでしょうか?
実は日本では「特定不妊治療費助成制度」という、高額な不妊治療にかかる治療費に対して、経済的な負担を軽減するために一部を助成するという制度が存在しています。
さらに2021年1月から助成内容がさらに拡充されました。
今回はこの「特定不妊治療費助成制度」の対象や申請方法について解説します。
以前までの助成制度と2021年からの助成制度の比較については以下の記事にまとめましたので確認してください。
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1.特定不妊治療費助成制度とは
特定不妊治療費助成制度とは不妊治療の経済的負担軽減を目的に、高額な治療費がかかる、配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する、厚生労働省が行う支援事業です。
厚生労働省の事業とはいえ実際は各都道府県や指定都市、中核市が事業の実施主体として運営しています。
そのため各自治体によって準備する書類、申請方法など細かい違いがありますので、詳しくは各自治体のホームページをチェックし細かく調べる必要があります。
2.助成額
まず、助成の対象となるのは医療保険が適応されない体外受精と顕微授精の2つです。これをこの助成制度では特定不妊治療と呼んでいます。
基本は30万円を上限として助成されます。(以前までは初回のみが30万円で2回目以降は15万円のみの助成でした)
ここでいう「1回の治療」とは採卵準備のための投薬開始から体外受精・顕微授精に至る治療とそれに伴う胚移植~妊娠判定までの一連の過程をさします。
また、以前に凍結した胚を解凍し胚移植を実施した場合も「1回の治療」となります。ただしその場合の助成額は10万円(初回でも)となります。
なお、体調不良などにより移植のめどが立たず治療終了となった場合や、採卵まではしたが卵子が得られなかった場合、受精操作まではしたが受精しなかったり、異常受となりその後の治療を中止した場合でも助成(10万円)の対象となりますので、必ずしも胚移植、妊娠判定まで達しなくても助成を受けることができます。
さらに、精子を精巣や精巣上体から採取する(TESEやMESAなど)手術費用及び、その精子の凍結費用を30万まで助成されます。(以前までは15万円でした)
これらの手術も保険は適用されません。
・男性不妊治療の助成は、特定不妊治療(女性側の治療)の助成申請と同時に申請することが必要です。つまり、男性不妊治療単独での助成申請はできません。
・卵胞が発育しなかったり、排卵したため採卵を行っていない場合は、男性不妊治療についても助成の対象にはなりません(次の採卵周期に同時に申請しましょう)
・採卵準備前に精子回収術を実施し、精子が採取できなかったため治療を中止した場合は、男性不妊治療のみの助成も対象となります。
3.助成回数
次に助成回数についても実は制限があります。
初めて助成を受けた時の治療開始日の時点で、1人の子供あたり妻の年齢が40歳未満は通算6回まで、40歳以上43歳未満は通算3回までとなります。
すなわち1人不妊治療で子供が得られた場合、2人目の治療を始めたら助成回数もリセットされ更に6回(40歳未満の場合)まで助成を受けることができます。
ただし、助成回数が上限に達していなくても43歳以上で開始した治療は助成対象外となるので注意が必要です。
このように助成回数に女性の年齢が密接に関わっています。
この制度を運営するにあたって女性の年齢を非常に重要視していることがわかりますよね。
4.対象者
次に対象者となる条件をチェックしていきましょう。以下の条件の全てを満たしていることが必要です。
□特定不妊治療以外の方法では妊娠の見込みがないか、極めて少ないと診断されたこと
□指定医療機関(東京都の指定医療機関・全国の指定医療機関)で特定不妊治療を受けたこと
□治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満であること
※これまでは夫婦合算で730万円未満(東京都は905万円未満)所得制限がありましたが、2021年から撤廃されました。
※事実婚も認められるようです。東京都では以前から認められており
- 1回の治療」の初日から申請日まで夫婦が継続して東京都(八王子市の区域を除く。)に住民登録をしていること。
- 住民票の続柄に夫(未届)、妻(未届)等の記載があり、他に法律上の配偶者がいないこと
が条件になっています。
これらすべてを満たしているでしょうか。
対象者であると分かったら必要な申請書類について見ていきましょう。
5.申請書類
申請期限は基本的に治療終了日の属する年度末(3月末)です。ただし治療終了日が1月から3月までの場合は、その年の6月末まで申請ができます。
※2021年から開始する助成制度は2021年1月1日以降に終了した治療が対象となります。
以下が基本的な申請書類となりますが、細かい部分が各自治体で異なっていることがありますので注意してくださいね。
・特定不妊治療費助成申請書
各自治体の様式を使用します。ホームページからダウンロードできることが多いです。
申請者が記入します。
・特定不妊治療費助成事業受診等証明書
各自治体の様式を使用します。ホームページからダウンロードできることが多いです。
指定医療機関が記入するものです。
・戸籍謄本
婚姻関係、婚姻日を確認するために必要です。
・領収書【重要!!】
医療機関への支払額を確認するために必要です。再発行はできませんので治療期間全てのものを大切に保管してください
・現住所を確認できるもの
運転免許所やマイナンバーカード、住民票など
6.最後に
今回ご紹介した「特定不妊治療費助成金」は国の制度ですが、独自に助成金制度を設けている自治体もあります。その中には、不妊検査や人工授精などの一般不妊治療についても助成を受けられるものもあります。
また、不妊治療は医療費控除の対象でもあるので税金の還付を受けることができます。その場合は、治療費から助成金の金額を引いた額が控除の対象になります。
さて、不妊治療の助成金制度についてその中身を見てきました。
この制度を積極的に活用して少しでも費用を抑えましょう。
これまでは所得制限に引っかかったり、助成回数の上限を超えてしまい現在の助成金制度では十分でないと感じる方もいたと思いますが、拡充によって所得制限が撤廃されたことで今後更にこの助成制度を活用する人も増えるのではないでしょうか。
今後は保険適応も検討されていますので、更に負担が減ることに期待したですね。
7.まとめ
・特定不妊治療費助成制度は厚生労働省の支援事業
・各地方自治体によって運営されており、対象や申請方法などが異なる場合がある
・所得制限は撤廃されたが、年齢制限はあるので注意
・自治体によって独自の助成制度が存在する場合がある
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